一般社団法人の主たる事務所について解説

今回は、一般社団法人の『主たる事務所』について解説します。
主たる事務所とは、株式会社でいう『本店』のことになります。

一般社団法人を設立する際は、主たる事務所を必ず決めなければいけませんが、注意点がいくつかあります。
必ず事前に確認しておきましょう。

当事務所では福岡県にて一般社団法人設立のサポートをしております。
お気軽にご相談ください。

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定款への記載方法

主たる事務所の所在地』は、定款の絶対的記載事項となっております。
定款に必ず主たる事務所の所在地を記載するのですが、記載の仕方にポイントがあります。

そのポイントとは、『最小行政区画までの記載でかまわない』という点です。

定款に主たる事務所の所在地を記載する際は、「福岡県福岡市中央区天神〇〇丁目〇〇番〇〇号」と正確な所在地を記載することもできますが、一般的には『最小行政区画までの記載』に留めることが多くなっております。

最小行政区画とは例えば『福岡市』や『春日市』といった区画です。
ですので、定款には『福岡県春日市に置く』というような記載をします。

なぜこのような記載方法にするかというと、主たる事務所を移転した時の定款変更の手間を減らすためです。
もし、主たる事務所を同じ春日市内で移転させた場合、定款変更をする必要はありません

ただし、定款に正確な住所を記載していた場合は、同じ春日市内の移転でも定款変更が必要となります。

また、最小行政区画までの記載でも、最小行政区画をまたいで移転した場合は、定款変更が必要となります。(春日市から福岡市へ移転した場合など。)

登記する所在地

登記する主たる事務所の所在地は、定款への記載とは違い、正確な住所を登記します。
マンション名や部屋番号は省略可能ですが、一般的には部屋番号は登記することが多いかと思います。

その理由は行政から届く郵便物は、この登記された住所宛に郵送されるからです。
重要な郵便物が確実に届くように、部屋番号は登記しておいた方がよいでしょう。

ただし、部屋番号が無くとも確実に郵便物が届く体制があるのであれば、省略してもかまわないでしょう。(建物に辿り着けば、法人の部屋番号が確実に分かる構造になっている等)

マンション名を登記するかは迷うところですが、「マンション名まで登記簿に記載されたくない」場合や、「マンション名が変更された際の変更登記のリスクを心配する」等の理由があれば、省略してよいと思います。
ただし、省略しても確実に郵便物が届く場合に限ります。

主たる事務所をどこにするか

主たる事務所をどこにするかですが、何点か注意点があります。
まず、登記に関しては主たる事務所の所在地に制限は特にありません
どこを主たる事務所としても、登記はできます(できてしまいます)。

ただし、実務上は注意すべき点がありますので、確認が必要です。
以下、注意点となります。

主たる事務所の注意点

・同一法人名称同一住所
・賃貸物件での注意点
・保有マンションでの注意点
・持ち戸建での注意点
・バーチャルオフィスでの注意点
・許認可事業での注意点

同一法人名称同一住所

所在地に制限はありませんが、『同じ所在地に同じ法人名称』の法人がある場合は登記できません。
どちらかが異なっていれば問題ありませんが、注意しておきましょう。

賃貸物件での注意点

賃貸物件の場合は、物件オーナーに「事業用として主たる事務所の所在地にしてよいか」の確認が必要です。
賃貸集合住宅の場合は、管理組合の規定に反していないかの確認も必要となります。(オーナーが確認するはずですが)

また、居住用と事業用とでは家賃が変わってきます。
事業用の場合は消費税が発生することになりますので、家賃の確認も必要です。

加えて自宅兼事務所とする場合は、融資の際にマイナス要因となる可能性があります。(この点は後述する注意点でも同様です。)

保有マンションでの注意点

保有マンション(集合住宅)の場合は、管理組合の規定に反していないかの確認が必要です。
ここでひっかかるケースは多いですので注意しましょう。

ばれないだろうと秘密裏に主たる事務所にした場合、法人口座を作る際に問題視される可能性もありますし、大きな住民トラブルに繋がる可能性もあります。

持ち戸建での注意点

持ち戸建の場合は、住宅ローンの規約に反していないか確認しましょう。
住宅ローン控除(減税)にも違反しないかも注意が必要です。

また、主たる事務所として使用することで、不特定多数の人が出入りするような場合は、近隣住民とのトラブルにならないかも注意しましょう。

バーチャルオフィスでの注意点

バーチャルオフィス運営元に、主たる事務所として登記可能かの確認が必要となります。

また、バーチャルオフィスを主たる事務所とする場合は、融資の際にマイナス要因となる可能性があります。
法人口座を作る際も問題視されるかもしれません。

加えて、取引先の印象も悪くなる可能性もあるので注意しましょう。
郵便物の配送に対応しているバーチャルオフィスかの確認も必要です。

許認可事業での注意点

許認可事業を行う場合は、要件を満たすことができる主たる事務所かの確認が必要です。
用途地域や周辺環境、設備や広さなど細かく確認しておきましょう。

主たる事務所の決定(変更)

一般社団法人の設立時には、設立時社員の同意によって、主たる事務所を決定します。
定款で最小行政区画までしか定めなかった場合、設立時社員の同意があったことを示す決議書を作成して、登記申請します。

設立後に主たる事務所を変更する場合は、理事会によって変更の決定をします。(理事会がない場合は、理事の決定。)

ただし、最小行政区画をまたいで移転する場合は、定款変更が必要となりますので、社員総会によって定款変更の決議がまず必要となります。

移転した場合は、変更登記も必要です。
法務局の管轄内での移転の場合は、変更登記手数料(登録免許税)は3万円ですが、管轄外に移転する場合は6万円と高額になります。
(管轄外の移転例:福岡県内から佐賀県内への移転)

まとめ

以上、一般社団法人の『主たる事務所』について見てきました。
主たる事務所の決定は、一般社団法人設立において非常に重要な事項となります。

注意点について事前に確認し、後のトラブルを防止しておきましょう。

当事務所では福岡県にて一般社団法人設立のサポートをしております。
お気軽にご相談ください。

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