収益納付とは

補助金における収益納付とは、簡単にいうと

補助金を使った事業でたくさん利益が出たら、補助金を返してください

という制度です。
つまり、『補助金は返さないといけない可能性がある』ということです。

「え!そんなこと聞いてない!」と怖くなった方もおられると思いますので、ここで一つ安心できるデータも紹介しておきます。

ものづくり補助金の収益納付の件数

今から紹介するデータは、[財務省2020年10月26日中小企業、エネルギー・環境(参考資料2)]の8ページ目に掲載されているものです。
[財務省2020年10月26日中小企業、エネルギー・環境(参考資料2)]

この資料にはものづくり補助金の過去の「収益納付の件数と金額」が記載されています。

ものづくり補助金は事業再構築補助金とよく似た補助金ですので、一応の参考にはなるかと思います。
あくまで参考ではありますが、どの程度の割合の事業者が収益納付をしているかを見る事ができます。

前提条件として知っておいてほしいのですが、ものづくり補助金と事業再構築補助金は毎年1回の計6回にわたり収益納付をする可能性があります。(事業化状況報告のたび)
また、あとの年になるほど、収益納付をする可能性が高くなることを頭に入れておいてください。(理由は後ほど説明いたします。)

収益納付の計算式は複雑ですので、ここでは一旦そういうものだというご理解で読み進めてください。

それでは財務省の参考資料から一部抜粋した下記の表をご覧ください。

採択年度平成24年
事業終了後6年
平成25年
事業終了後5年
平成26年
事業終了後4年
平成27年
事業終了後3年
平成28年
事業終了後2年
平成29年
事業終了後1年
報告対象者数9,518件13,263件12,219件7,525件5,904件11,418件
付加価値額が増加した事業者数6,666件
(70.5%)
8,633件
(65.5%)
7,639件
(62.8%)
4,748件
(63.8%)
3,537件
(61.2%)
6,226件
(55.0%)
収益納付の件数175件
(1.8%)
93件
(0.7%)
32件
(0.3%)
11件
(0.1%)
1件
(0.01%)
財務省2020年10月26日中小企業、エネルギー・環境(参考資料)ものづくり補助金の実績より

見ていただきたい部分は「収益納付の件数」の行(赤字の部分)です。
表の見方が分かりにくいと思いますが、平成29年は事業が終了してまだ1年なので0件。
平成28年は事業終了して2年の段階となり、1件。
平成24年になると事業が終了して6年の段階になるので、175件。
というような見方になります。

いかがでしょうか?
思ったより少ない
という印象を持たれたのではないでしょうか?
事業終了後6年の段階でも、全体の1.8%しか収益納付の対象となっておりません

このデータが今後の事業再構築補助金にそのまま当てはまるわけではないですが、補助金返還の該当者はそれほど多くないというデータは、ひとつ安心材料になるのではないでしょうか?

ただし、後でもっと怖い話もさせていただきます。

収益納付の計算式

それでは収益納付の計算式はどのようなものかを、簡単に見ていきます。

※理解しやすいように正式な呼び方ではなく、分かりやすい言葉で説明いたします。また、イメージを掴みやすくするためですので、正確な表現からは少しずれることをご了承ください。
※やや複雑な話ですので、飛ばしてもらってもよいです。その場合は「利益がたくさん出たら収益納付が発生する」と覚えておいてください。
※収益納付の上限額は補助金額となりますので、「補助金をもらったのに結果マイナスになった」という事はありません。

収益納付の計算式(説明用簡易版)は・・・

(『その年の補助事業に係る営業利益』ー『控除額』)✖️『採択された補助率』

となります。
「営業利益」は会社全体ではなく、補助事業に係る営業利益になります。
(ですので、補助事業の売上、原価、販管費を管理しておく必要があります。販管費に関しては按分で計算してもよいかと思いますが、売上や原価は既存事業と一緒にしないよう気をつけましょう。)

「控除額」は何かといいますと、自己負担した手出しの部分です。
補助金を経費の3分の2もらっていた場合は、残りの3分の1の部分になります。

つまり、補助事業の営業利益が手出し分を超えた時に収益納付が発生するということです。

また、先ほど「あとの年ほど収益納付が発生しやすくなる」と言いましたのは、この控除額に原因があります。
「控除額」が「補助事業営業利益」を超えた時は、収益納付は発生しませんが、この場合は、翌年の「控除額」が

「控除額」ー「前年の補助事業営業利益」

となってしまいます。
このように「控除額」は年々減っていくため、あとの年ほど収益納付が発生しやすくなるのです。

「採択された補助率」とは、3分の2とか2分の1といった補助金の補助率のことです。

ちょっと難しかったとは思いますが、実際に算定する時は、項目に数字を入力していけば自動で計算されますので、計算式を覚える必要はありません。
また、正確な計算式を確認したい方は事業再構築補助金公式サイトの「補助事業の手引き」の収益納付の項目をご確認ください。(かなり分かりにくいですが)
『事業再構築補助金公式サイト』

収益納付より怖いこと

先ほど、後でもっと怖い話をしますと意地悪な事を言ってしまいましたが、先ほどの財務省のデータを見て、何か気づいた点はなかったでしょうか?
もう一度抜粋表を掲載します。

採択年度平成24年
事業終了後6年
平成25年
事業終了後5年
平成26年
事業終了後4年
平成27年
事業終了後3年
平成28年
事業終了後2年
平成29年
事業終了後1年
報告対象者数9,518件13,263件12,219件7,525件5,904件11,418件
付加価値額が増加した事業者数6,666件
(70.5%)
8,633件
(65.5%)
7,639件
(62.8%)
4,748件
(63.8%)
3,537件
(61.2%)
6,226件
(55.0%)
収益納付の件数175件
(1.8%)
93件
(0.7%)
32件
(0.3%)
11件
(0.1%)
1件
(0.01%)
財務省2020年10月26日中小企業、エネルギー・環境(参考資料)ものづくり補助金の実績より

この表の「付加価値額が増加した事業者」の行をご覧ください。
この行は付加価値額が増加した事業者の割合を示したものですが、55〜70%ほどしかおりません。

ものづくり補助金の付加価値額とは、「営業利益 + 人件費 + 減価償却費」のことです。(事業再構築補助金でも同じ定義です)

「減価償却費」は補助金によって設備投資をしていますので、減価償却費は増えているはずです。(既存減価償却費が大きくて、その分を途中で償却してしまって減少する可能性もありますが)

「人件費」はいかがでしょう?
新しい事業を始めるのですから、人件費も増加するのが普通だと思います。

にも関わらず、付加価値額が増加していないとなると、残るは「営業利益が減っている」という事ではないでしょうか?(様々な複合要因があるでしょうから一概には言えませんが)

つまり「補助金の効果が出ていない」事業者が3〜4割もいると言えるのではないでしょうか?

当事務所では「補助金申請の本当の目的は、補助金を獲得することではなく、事業が成功すること」を目指して、補助金申請支援をしております。

一見するとそれは当然の事なのですが、その当然のことが達成できていない事業者が3〜4割もいる事になってしまいます。
たしかに収益納付で補助金の返還金が発生することは怖い事ですが、それよりも怖い事は「補助金をもらったのに利益が出ていない」事ではないでしょうか

結局は「どれだけ利益を出せるか」が大切な事ですので、その過程として「補助金をもらった」「補助金もらえなかった」「補助金を返還した」「融資を受けた」等の様々な事があると思います。
しかし、それらは「手段」であり「目的」ではありません
もし「補助金を返還したくないから、あまり利益を出したくない」という考えになってしまったら、注意したほうが良いでしょう。

たしかに収益納付で返還金が発生することは残念ですが、統計にあるように、大きく利益が出ない限りは発生してこないものと思います。
つまり収益納付が発生したということは、事業が成功しているひとつの指標でもあります。
また、返還金は補助金額が上限ですので、仮に全額返還となっても「無利子の融資を受けて大きく利益が出た」という考え方をしてもよいかもしれません。

ぜひ補助金を活用して、皆様の事業を成功させてください。

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